2026/03/04 13:20

寒さのなかに、ほんの少しだけ春のぬくもりが混ざりはじめる3月。
やわらかな日差しや、ほころびはじめた花の気配に、季節の移ろいを感じる頃です。
3月3日は、ひな祭り。
女の子の健やかな成長と健康、そして幸せを願う、日本の伝統行事です。
桃の花を飾り、ひな人形を並べ、そして想いを込めた色とりどりのお菓子でお祝いする…
そのひとつひとつには、家族のやさしい願いが重ねられてきました。
実は、行事に並ぶお菓子たちは、ただの“甘い楽しみ”ではありません。
子どもの未来を思う気持ちを託す、特別な存在でもありました。
おこしもまた、そんな「願いを込めた特別な存在」として受け継がれてきたお菓子のひとつ。
今回は、ひな祭りの歴史に触れながら、おこしなどの伝統菓子に込められた「想い」をたどっていきます。
【ひな祭りのはじまり】
ひな祭りの起源は、平安時代にまでさかのぼります。
人形に災いを託して川や海へ流し、無病息災を願う祓いの風習と、
貴族の少女たちの間で広まっていた「ひいな遊び」と呼ばれる人形遊びが結びつき、
現在のひな祭りの形へと変化していきました。
3月3日が節句として定着したのは室町時代頃。
戦国の世が終わり、平和な江戸時代になると、ひな祭りは華やかな行事として広く広がります。
江戸中期には、女の子の誕生を祝う「初節句」の風習も生まれ、ますます盛んになりました。
明治時代に一時衰えたとされていますが、長く人々の暮らしに根付いていた節句文化はやがて復活。
こうしてひな祭りは今もなお、子どもの健やかな成長を願う春の行事として受け継がれています。
【ひな祭りのお菓子に込められた願い】
また、ひな祭りには行事ならではのお菓子が並びます。
色とりどりのお菓子には、春の情景と、健やかな未来への願いが込められています。
・ひなあられ
ひなあられは、桃・白・緑などに色付けされたあられです。
桃色は「魔除け・厄払い」、白は「清浄・子孫繁栄」、緑は「健康・長寿」を表しています。
その由来は諸説ありますが、江戸時代に行われていた、
晴れた日にひな人形を外に持ち出し山や海を見せてあげる風習と関係しているとも言われています。
その際に持参し、食べられていたのがひなあられだとか。
関東と関西で味付けが異なるのも、興味深い特徴のひとつです。
・菱餅
菱餅は、桃・白・緑の三色が重なった菱形のお餅。
ひなあられと同じく、それぞれに魔除けや子孫繁栄などの願いが込められています。
桃は花、白は雪、緑は新緑を表し、春の景色を映したものともいわれています。
もともとは白と緑の二色でしたが、明治時代に現在の三色へと変化しました。
ちなみに、その特徴的な菱形の角には魔物を遠ざける効果があり、
角から食べることで健康に過ごせる、という言い伝えもあります。
(「角から食べて菱餅を丸くする=角を立てずに丸く生きる」というお洒落な意味もあるらしいです…!)
ひな祭りや、ひなあられ、菱餅に込められてきた、健やかな成長への願い。
それは時代が変わっても、かたちを変えながら受け継がれてきました。
私たちのおこしもまた、そんな想いを込めた存在でありたいと願っています。
“おこし”という言葉には、「興す」という意味合いがあります。
すこやかな未来を興す。
あたたかな春を興す。
3月3日。
小さなおこしに願いをのせて、今年もまた、あたたかな季節を迎えませんか。
